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『ソーシャルワーク実践におけるデジタル技術の活用促進に関する調査研究事業 報告書』(2023年3月)概要

ソーシャルワークの実践現場におけるデジタル技術の活用状況等の現状を把握し、その効果と課題を明らかにするとともに、デジタル技術を活用したソーシャルワーク実践を展開する社会福祉士等を対象とした実態調査を行」うことを目的とした、『ソーシャルワーク実践におけるデジタル技術の活用促進に関する調査研究事業 報告書』(2023年3月)が、社会福祉士会から出されました。

 

この概要と感想をいくつか述べたいと思います。

 

背景

  • 厚生労働省の報告書によると、社会福祉士は地域共生社会実現のため実践力向上が求められている。
  • 新型コロナウイルス感染症の影響で、クライエントとの対面支援が制限されている。
  • ICTツール(Zoom、ビジネスチャットなど)が一部で使用されているが、その実効性や利用状況は不明確。
  • 多くのクライエントがデジタル技術を持たないか活用できないため、情報格差が拡大するリスクがある。
  • デジタル技術の活用における機関間の格差が存在し、一部の事業者はオンライン会議への参加が困難。
  • 2021年の基礎的研究では、緊急事態宣言下での非対面支援の工夫と困難が明らかにされた。
  • デジタル技術不足やソーシャルワーク実践におけるジレンマが指摘されている。

 

調査結果概要

  • メールによるやりとりやインターネットでの情報収集、Zoom等のビデオ会議システムの活用は一般的なものになっている一方で、SNS、動画配信サイト、AI(人工知能)、クラウド、データ分析ソフト、音声認識ソフト、センシング技術は未だソーシャルワーク実践には一般的に活用されているとは言い難い。
  • Wi-Fi環境は全体の7割で整備されているが、事業所規模が大きい(1法人5事業所以上、あるいは職員101人以上)場合にその割合が低いことから、負担が大きくなると整備されづらい可能性がある。
  • 実践での活用意向が高い一方で、デジタル技術の学習機会はあまりなく、またセキュリティやリテラシー格差など活用への不安がある。 
  • 所属組織はデジタル技術の導入費用の負担に前向きでも、余裕はない。また、デジタル技術の維持費用に負担を感じている。 
  • 上司がデジタル技術を好む場合や相談できる人がいる場合、学習の機会がある場合、所属組織のデジタル技術導入意向が強い場合は、よりよくデジタル技術が活用される。
  • デジタル技術のソーシャルワークへの活用状況と所属組織の状況・考え方は強い相関関係 がある。
  • クライエントのデジタル技術の理解状況や、機器所有状況の格差が存在する。

 

提言

  • ソーシャルワークにおけるデジタル技術活用の促進に向けて、デジタル技術の導入・維持費用の負担の軽減に向けた補助や、デジタル技術に関する人員配置、学習機会の確保、基本的なWi-Fi環境の十分な整備などが必要である。
  • デジタル技術の活用について、ソーシャルワーカーとクライエント双方の理解の促進が必要である。

 

感想

新型コロナウイルス感染症は、「対面制限」という、ソーシャルワーク実践の根幹である「面接」を制限する事態をもたらしました。対面よりも情報量が大幅に少なくなってしまう「画面越し」の実践に、私を含めて多くのソーシャルワーカーは戸惑いを覚えたのではないでしょうか。

「直接会う」のが画面越しに勝ることは自明ですが、事実上それができない環境下にあって、それでも弱者を取り残さない実践をどのように展開していくかが近年大きなテーマであったように思います。

一方、そんなジレンマを感じつつも、単純な事務連絡や情報共有場面では、ICT技術の活用が案外便利だと、私を含めて多くの方が気付いたのではないでしょうか?

さまざまな教訓がありますが、私個人としては、以下の点を強調したいと思いました。皆さんは、どのように考えられますか?

  • 「対面は画面より確実に勝る」こと、しかし、事実上それが制限される環境下となった場合は、その中でICT技術も取り入れつつ最善の実践を模索する必要がある。
  • 今後も、新興感染症の蔓延などによって対面制限が敷かれる可能性があるため、福祉分野におけるデジタル基盤整備が必要である。
  • DX化の推進によって、ソーシャルワーク実践の質を高める余地が認識され始めた。これを拡大していく必要がある。